ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 一方的に婚約を破棄したあと、少なくない違約金とともに新たな婚約者としてライラが差し出された。
 そんな経緯があったにも関わらず今回のこの騒動だ。
 二度も婚約者を奪われて、黙っていられる男などそういないだろう。

「さぁ、最近はどうしているのかしら……あの子もマメじゃないし、ライラのことなんて気にかけていないかも」
「婚約しているのよ? さすがに定期的に会ったりはしているのでしょう?」

 確かに女性扱いが上手い彼ではなかったが、アンドレアと婚約中は相手を立てる程度にはデートの誘いや贈り物をしてくれていた。

「エドガーは滅多にケラー家には近寄らないし、結構ライラ、放置されてたわよ? まぁ、あの()も気に留めてなかったようだけど」

 ケラー家でライラと一緒に暮らすエリーゼが言うなら間違いはないのだろう。
 体裁上あてがわれた年の離れた婚約者など、エドガーも興味を持てないということか。

「エドガーの心情も察してあげて」
「そうよね……」

 アンドレアとの婚約破棄は、各家に招待状を送ってまさに結婚式が執り行われようとしていた直前のことだ。
 あまりにも非礼で侮辱的な行為だったとアンドレアも思う。

「いくらあのエドガーでもさすがにプライドが傷ついたわよね」
「要点はそこではないのだけれど」

 そう漏らしたエリーゼはどこか呆れ交じりの苦笑いだ。
 侍女のマリーと同じような反応をされ、不思議に思ったアンドレアはただ首を傾げた。

「でもそうね。一度エドガーと話をしてみるわ。身重の姉の呼び出しなら、渋々でもやってくるでしょうから」
「迷惑ばかりかけて本当にごめんなさい」
「どうしてアンドレアが謝るの? 悪いのはみんなポール様よ!」

 自分のことのように憤慨するエリーゼを見て、アンドレアは心が温かくなった。
 味方になってくれる人がいる。それだけで救われた気分だ。

 たとえ理不尽な現実が、なにひとつ変わらないものだったとしても――。

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