ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「ずるいわ、エドガーは男だからって好き勝手に外を出歩けるんだもの。わたくしも男装でもして、外回りの業務をやってみようかしら?」
「だ、駄目だ、そんな危険なこと!」
「エドガーの補佐として一緒に行動すればいいでしょう? それともエドガーはわたくしを守れないとでも言うの?」
「そのときはこの命に代えても守ってみせる! いや、そういうことじゃない! 野郎ばかりの中にアンドレアを連れていくこと自体が心配なんだ!」
「だから男装するって言っているのじゃない。わたくしなら、シュミット家をもっと大きく繁栄させられてよ?」

 エドガーの判断基準は、時々どこかずれている気がしてならない。
 頭をかきむしりながら言うエドガーに、アンドレアは呆れ交じりの視線を向けた。

「実に頼もしい言葉よの」
「お爺様!?」

 いきなり現れた祖父が、ベビーベッドで眠っていた赤ん坊をひょいと抱き上げた。
 一度国王と見つめ合った我が子は、そのまますぅっと再び眠りに落ちた。

「おお、このわしを前にして泣かぬとは。将来大物になるに違いない」
「お爺様、どうしてここに……?」

 アンドレアはぽかんとなった。
 その横でエドガーが直立不動で固まっている。

「初ひ孫に会いたくてな。黙って城を抜けだして来た」
「誰にも言わずにいらっしゃったのですか!?  今頃城は大騒ぎになっているんじゃ……?」
「何、問題はない。今わしは寝台の上で意識不明の重体に陥っているところだからな」

 やせ細った祖父そっくりの蝋人形は未だ顕在らしい。
 快活に笑った国王の腕の中で、目覚めた我が子がきゃっきゃとうれしそうな笑い声をあげた。

「いつもなら人見知りがひどいのに。この子はひいお爺ちゃまが大好きなのね」
「そうか、そうか。これからも頻繁に会いに来るからな」
「こ、国王様。そのときはせめて先ぶれをよこしていただけますと……」

 恐る恐るエドガーがお伺いを立てた。
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