ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 毎回いきなり来られては、エドガーも心臓が持たないのだろう。

「ただのじじいがひ孫に会いに来るだけだ。余計な気遣いはいらぬ」
「いや、シュミット家としてはそういうわけには……」
「そういえばお爺様。伯父様の臣籍降下をよくお許しになられましたわね」

 穏やかな性格の伯父は、王太子になったあともずっと国王になることを渋っていた。
 長年いくら伯父が願い出ても、臣籍に下る許しを出さなかった祖父だ。

「情勢が変わったからの。これだけ平和な世だ。初めは一番上を指名するのが、いらぬ争いを生まぬと思っておったのだが」

 言いながら、威厳たっぷりの国王の顔になっていく。
 ぐずりだした赤ん坊をアンドレアに預け、祖父はどっかりと椅子に座り込んだ。

「ポールにその気があるのなら、やりたい奴にやらせるのも手かと思うてな。伸びしろがあると見込んで、長いこと若さゆえの至らなさを甘い目で見ていたが……まさかあそこまでやらかすとは、期待したわしが馬鹿であったわ」

 虚空を見据えた鋭い瞳に、エドガーばかりかアンドレアも無意識に背筋を正した。

「結果、アンドレアには苦労を強いた」
「いいえ、お爺様のせいではありませんわ。例え(あらが)えない環境だったとしても、わたくしには他の選択をする余地はありましたもの」
「そう言うてくれるか」
「はい。今あるわたくしは、すべてこれまでわたくしがしてきた選択の結果。それ以外の何物でもありませんわ」
「くっ、そうか。アンドレアは誠に女にしておくのが惜しいの」
「それでは俺が困ります!」

 可笑しそうに漏らされた言葉に、エドガーがアンドレアを赤ん坊ごと抱き寄せた。
 べったりと張り付いてくるエドガーを、どこか煩わしそうに遠ざける。

「もう、エドガー。そういうのはいいから」
「アンドレア……」
「随分と尻に敷かれとるのう」

 国王に突っ込まれ、情けなさそうなエドガーが益々情けない顔になった。
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