ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
(だとしたら滑稽ね)

 アンドレアが寝る間も惜しんで領地のために働いている間、ポールはずっとライラとよろしくやっていたわけだ。
 最近ではおおっぴらにして、ポールはふたりの仲を隠すことをしなくなった。
 屋敷中に箝口令(かんこうれい)が敷かれており、使用人同士で互いを見張らせているようだ。
 告げ口合戦で罰せられた者もいるらしく、最近は屋敷内の雰囲気がギスギスしているとマリーは話してくれた。

 豪華な昼食のコースを味気なく終え、再び執務室に戻るためにアンドレアはダイニングルームを出た。
 行く廊下の先に、やたらと派手な装いの誰かが見える。
 それは今から出かけますといった様子のライラだった。

(嫌なタイミングで来てしまったわ)

 そう思うも、自分がわざわざ避けて通るのもおかしな話だ。

(この家の女主人はわたくしなのよ)

 自分に非があるわけではないと、マリーとともにアンドレアは構わずそのまま歩を進めた。
 向こうもアンドレアの姿を認めたのか、ライラは我が物顔で堂々と廊下の真ん中を歩いて来る。
 居合わせた使用人たちは、全員が見て見ぬふりだ。

「あら、アンドレアお姉様、ごきげんよう」

 アンドレアを守るために間に入ろうとしたマリーを手で制する。
 いるはずのない者がこの屋敷にいることに、アンドレアはただ無言で抗議を示した。

「相変わらず地味な格好ね。ま、お姉様の年じゃ、そのくらいが身の丈に合ってていいんでしょうけど」

 鼻で笑われて、アンドレアは不快感をあらわにした。
 確かに機能性重視のドレスだったが、今纏っているのは特注で仕立てられた公爵夫人に相応しい一級品の意匠だ。

「どう? このドレス素敵でしょう? ポールがライラに贈ってくれたのよ?」

 ライラはスカートのドレープをつまみ上げ、大袈裟な動作でくるりと回ってみせた。
 これ見よがしに何度もスカートの裾を揺らすと、最後にどや顔を向けてくる。
< 16 / 138 >

この作品をシェア

pagetop