ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 まるでおもちゃを見せびらかす幼稚な子供のようだ。見ていてこちらが恥ずかしくなってくる。

「こんな華やかなドレス、お姉様には到底着こなせないでしょう? これを着てこれからポールとでかけるの。どう? うらやましいでしょ? ね、お姉様?」
「ここはシュナイダー家よ。一体何のつもり?」
「やだぁ、もしかして嫉妬? こんなにもライラがポールに愛されてるからって、お姉様みじめになっちゃったぁ?」
「わたくしは恥を知りなさいと言っているのよ」

 冷静に低い声音で返した。
 ここで感情的になったら、アンドレアもライラと同じレベルになってしまう。
 すっと真顔になったライラは、すぐに(いびつ)な笑みを口元に浮かべた。

「恥? 何よそれ、そんなもの知るわけないじゃない。ライラが知ってるのはポールへの愛だけよ!」

 廊下に甲高い声が響き渡る。
 呆れ返り過ぎて、アンドレアは次に言うべき言葉を見失った。

「ほうら、何も言い返せないじゃない。やっぱりライラがうらやましいんでしょう? 意地を張ってないで素直に認めたらどうなの?」

 あまりに幼稚な物言いに、相手にする気も失せてくる。
 昼休憩もとうに終わりの時刻だ。時間の無駄だと、アンドレアは無言のままライラの脇をすり抜けた。

「お姉様もポールに愛されたいんだったら、せいぜい一枚でも多く書類を片付けることね!」

 背中に浴びせられた罵声に、それでもアンドレアは無視して進んだ。
 ついて来るマリーだけが怒りを隠せないでいる。

「放っておきなさい、マリー」

 感情を無にして、アンドレアは午後の仕事に意識を切り替えた。

< 17 / 138 >

この作品をシェア

pagetop