ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「はい、それが……鉱山で使う火薬の仕入れで、交渉が難航しておりまして……」
「火薬の? 見せなさい」

 書類を受け取り、アンドレアは眉根を寄せた。

「何なの、これは? 仕入れ値が相場の十倍以上になっているじゃない」

 仕入れ先は長年取引を続けている他領地の商会だ。
 ポールが当主になったときに足元を見てくる者はいるにはいたが、これほどあからさまな値段をつけられたのは初めてだ。

「単に書き間違いではないの? 相手に確認は取ったのね?」
「確認は取りましたが、何でも上役が変わったとかで。その値でないと売れないとの一点張りでして……」

 それで交渉が一向に進まず困っているのだと男は訴えた。
 上役自らが出張ってきて、何を言っても聞き入れてくれないらしい。

「こちらはシュナイダー公爵家なのよ? こんなふうに舐められるだなんて、少し対応が甘いのではなくて?」
「いえ、それがその……あちらの上役もそれなりのご身分でして、これ以上はわたしどもではどうにも……」
「それなりの? 貴族ということ?」
「はい、そのようで」
「貴族なら尚更じゃない。公爵家に喧嘩を売ろうだなんて、その相手は一体何を考えているのよ」

 公爵は王族に次ぐ身分の称号だ。
 例え政敵の嫌がらせだったとしても、もっと上手い立ち回り方がいくらでもあるだろうに。

「その上役のお方はどうにも掴めない性格でして……どうしたものかと、こうしてご相談に上がった次第です」
「なんだか要領の得ない話ね……」

 使用人もほとほと困り果てた様子だ。
 相手を呼び立てても良かったが、使用人の報告では火薬不足が生じて既に事業に支障をきたす状況になっていた。
 他に取引先を探すにも時間がかかる。
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