ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 しばらく思案するも、寝不足もあってか良い案は浮かんでこなかった。
 考えることを放棄して、アンドレアは立ち上がった。

「いいわ、わたくしが直接話をつけに行きます」
「よろしいのですか!?」
「あなたたちだけでは埒が明かないのでしょう? 今すぐ出向くから準備なさい」

 普段アンドレアは交渉の場に表立って出ることはなかった。
 女だからと相手に軽く扱われることが多いため、あくまで裏での指示・判断に徹している。
 だが今回ばかりは仕方がないだろう。

 結局ゆっくり休むこともできずに、アンドレアは馬車で下町へ向かった。
 使用人を数人引き連れ取引相手の商会の門をたたく。
 急に連絡して来たわりには、慌てることなくすんなり中に通された。

「ただいま責任者を呼んでまいります」

 案内された応接室はそれなりの調度品で品よく整えられている。

(どこの貴族か知らないけれど、わたくしの顔を見たら驚くわね、きっと……)

 本来ならポールが対応すべきなのだろう。
 だがアンドレアには、相手をやり込めるだけの知識と実力を持ち合わせている自信があった。

 カツカツと乾いた靴音が近づいて来る。
 こちらが上だということを示すために、座ったままその男を出迎えた。
 しかしやって来た男の顔を見て、驚きのあまりアンドレアは気づけばソファから立ち上がっていた。

「待ちかねましたよ。シュナイダー公爵夫人」

 耳に馴染んだ声で、男は薄く笑った。

 そこに立っていたのは、アンドレアのかつての婚約者、エドガー・シュミットその人だった。
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