ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
(だとすると、ポールを誘い出そうとして、わたくしがやってきたからエドガーも驚いたんじゃ……)

 しかしエドガーは先ほど、アンドレアを見て「待ちかねた」と口にした。
 まるで自分が来ると知っていたかのような口ぶりだ。
 正面に座るエドガーからは、感情をまったく読み取れない。
 ここへ来た目的も忘れて、アンドレアはただ困惑して座っていた。

「早速ですが、シュナイダー夫人。交渉を始めてもよろしいですか?」
「えっ? え、ええ、もちろんよ」

 少々間の抜けた返事に、エドガーの顔が僅かに笑いを含む。
 それに気づいた途端、アンドレアの負けん気に火がついた。

「シュナイダー家とは長年取引を続けてきましたが、この火薬の値は十年以上も前に決められたもの。そろそろ見直しが必要な時期かと思いましてね」
「だからと言ってこの値段は法外過ぎるわ! いくらなんでも適正価格を無視し過ぎよ。商売をする気があるならきちんと市場価格を調査すべきではなくて?」

 目の前に(くだん)の見積書を広げられては、アンドレアもおとなしくなどしていられない。
 気づけば仕事モードに入り込み、エドガー相手に白熱した議論を交わしていた。

「では今後はこの値段設定で。シュナイダー家もこれでご納得していただけたということでよろしいですね?」
「ええ、いいわ」
「それでは正式な契約書は後日こちらから送らせていただきます。今後ともどうぞご贔屓に」

 再び握手を求めてきたエドガーに、アンドレアは冷たい視線だけを返した。

「この値でいいのなら、わたくしだってすぐに再考したわ。なぜわざわざあんな馬鹿げた見積もりを出したというの?」
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