ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「貴女を表に引っ張り出すためですよ。あのくらいのことをしなければ、交渉は下の者に任せていたでしょう?」
「それはそうだけど……」

 飄々としたエドガーの真意が掴めない。
 ただこの様子では、まだライラのことを知らされていないように思えた。

「では今日はこの辺りで。入り口までお送りしますよ」

 手を取られ、アンドレアはゆっくりと立ち上がった。まるで夜会でエスコートを受けているような丁重な対応ぶりだ。
 しかしほんの一瞬だけ不自然に強く引っ張られた気がした。バランスを崩したアンドレアは、そのまま毛足の長い絨毯に躓きそうになった。

「きゃっ」
「おっと危ない」

 あわやというところでエドガーの腕に抱き留められる。

「誰だ? こんなところにこんなものを置いた奴は! シュナイダー夫人に何かあったら賠償責任くらいじゃ済まされないぞ!」

 エドガーのせいで躓いたのにも拘らず、そんなことを言われたアンドレアはすぐさま抗議の声を上げようとした。

「何かあったら遠慮なく頼れ」
「え?」

 ふいに耳元で囁かれる。
 驚きで顔を上げたアンドレアは、真剣な眼差しのエドガーと至近距離で見つめ合った。

「俺だったらアンドレアの力になれる」

 腰に回された手に力が籠められる。
 言葉を返せずにいると、密着した体はすぐに離された。

「さぁ、全員で夫人のお見送りだ」

 そのエドガーの一声で、商会の人間がずらりと並び出す。
 それ以上は言葉を交わせないまま、アンドレアはシュナイダー家に戻るしかなかった。

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