ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 帰りの馬車に乗るなり、ポールはいきなり大きな声で笑い出した。
 行きはあんなにも縮こまっていたくせに、今はふんぞり返る勢いだ。

「見たか、アンドレア。あの老いぼれたお爺様の姿を! あの様子じゃ、くたばるのも時間の問題だな!」
「ポール、あなたなんてことを……!」

 聞き逃せない言葉に、さすがのアンドレアも黙ってはいられない。

「本当のことを言って何が悪い? お爺様も言っていたじゃないか。王家の存続は俺の肩にかかっていると」
「あれは血筋の話でしょう⁉ お爺様がお望みなのはポールとわたくしの……」
「うるさい! お前は俺の子を産めると期待したかもしれないが、俺はそんな気はさらさらない!」

 怒鳴り散らすと、ポールは意地の悪い笑みを浮かべた。

「シュナイダー家の跡取りを産むのはライラだ。アンドレア、お前など及びじゃない。弁えろ」
「それではお爺様に言ったあの言葉はなんだったのよ……」
「死にぞこないとの約束など守る必要がどこにある? それにライラが産む子は俺の血を受け継ぐんだ。いずれ国王となる俺の血をな」

 あまりのポールの言いように、アンドレアは頭に血がのぼって言い返せなかった。
 だが国王崩御となれば、ポールの戴冠式も現実味を帯びてくる。
 もはやポールの子など産みたいとも思わないが、こんな腐った性根の人間が王位に就くなど、空恐ろしくて仕方がない。

 あの場でポールにそう言ってやればよかった。
 後になってから、アンドレアはそんな後悔をしたのだった。

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