ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「そう言わないでゆっくりしていって」

 おっとりと微笑んだエリーゼは、ちょうどティーセットを持ってきたメイドに何か耳打ちをした。

「あの侍女を丁重にもてなすよう言っておいたから。盗み聞きよりも、目の前のお菓子に夢中になるように、ね?」

 そう言って軽くウィンクを飛ばしてくる。
 つられるようにアンドレアが笑みをこぼすと、エリーゼは満足げに頷いた。

「で、どうなの? 最近は」

 念のためか、エリーゼは小声で聞いて来る。

「ライラはシュナイダー家で益々やりたい放題にしているわ。ポールもそれを止めないし、使用人も見て見ぬふりよ」
「そう……」
「あとお爺様のお見舞いに行くことができたわ。ポールも一緒だったけれど」
「じゃあ国王様に相談はできなかったのね?」
「ええ」

 アンドレアは最後に祖父に言われたことをエリーゼに話した。

 ――まずはお前がしあわせになれ

 あれはどういう意図で言われたものだったのか。アンドレアはそれをまだ理解できないでいる。
 祖父はこうも言った。自己犠牲で成り立つ平和は長続きしないのだと。

 貴族とは家の利益を優先すべきものだ。幼いころからそう教えられて育ってきた。
 あの日の祖父の言葉はこれと真逆のことだ。
 己の犠牲なくして、アンドレアは貴族たり得ないのだから。

「まぁ、国王様がそんなことをおっしゃったの?」
「わたくし、どう受け取ったらいいのか分からなくって……」
「でもまるで、アンドレアの事情を知っていらっしゃるみたいなお言葉よね」
「そんなはずないわ。ポールもいたし、わたくし何も相談はできなかったもの」
「だったら純粋に孫のしあわせを願ってくださったんじゃ?」

 虚空を見つめていた祖父は、もしかしたら視力が失われていたのではないだろうか?
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