ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 彼にとってのアンドレアは、まだ幼い孫娘のままでいるのかもしれない。
 そう思えばあの言葉も、少し腑に落ちたように感じた。

「あともうひとつ……」

 ポールの祖父に対する暴言を伝えかけて、アンドレアはその先の言葉を飲み込んだ。

(あんな酷いこと、エリーゼには聞かせられないわ)

 まるで祖父の死を心待ちにする悪魔のような言い様だった。
 今日は姪の誕生を祝うために来たのだからと、アンドレアはそう思い直した。
 しかし言いかけたまま黙ったアンドレアに、エリーゼが不思議そうな顔を向けてくる。

「もうひとつ? なに?」
「あ、ええと……そう、エドガーに会ったわ! 商談の取引相手としてだったけれど」

 大事なことを忘れていた。
 エリーゼがライラのことをエドガーに話したのか、ずっとそれが気になっていたのだ。

「その話題がいちばん最後なわけね……しかも今やっと思い出したって感じだし……」

 なにやらぶつぶつ言っているエリーゼに、今度はアンドレアが首を傾げた。
 そのとき隣の部屋から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

「あら、目が覚めたみたいね。ちょうどいいわ、アンドレアも一緒に来て」

 促されて移動する。
 途中ちらっと視線をやると、監視役の侍女がじっとアンドレアの様子を盗み見ているのが分かった。
 隣の続き部屋は、子供部屋になっていた。
 立派なベビーベッドで赤ん坊が顔を真っ赤にして泣き叫んでいる。

「そこの扉は閉めてもらえる? さすがにここに籠っていても、不審がられないでしょう?」

 赤ん坊を抱き上げながら、エリーゼが言った。
 扉を見やると、すぐそこまで監視の侍女が来ている。なんとしてでも盗み聞きしたいのだろうか。
 どのみち赤ん坊の泣き声が大きくて、会話など聞こえなさそうだ。
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