ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「あ、うちの人は当てにしないでね? 彼、この家じゃ立場が弱いから。発言権なんてほとんどないわ」

 エリーゼの夫は、元々はケラー侯爵の甥だ。
 アンドレアとライラしか子供がいなかった侯爵は、跡取りとして彼を養子に迎えた経緯があった。
 その彼に嫁いだエリーゼも、当然ケラー家で幅を利かせるほどの力はない。
 第一子に跡取りとなる男児を産んだので、既にお役御免な立ち位置だった。

(できればアンドレアをシュナイダー家から出してあげたいけれど……)

 どうやらエドガーはそうは思っていないらしい。

「貴方はアンドレアとポール様がこれからも上手くやっていく路線で進めたいの?」
「当然だろう。アンドレアはシュナイダー家に嫁いだんだ。公爵夫人の立場を守りたいに決まっている」

 自分で言っておきながら、エドガーはどんどん不機嫌になっていく。
 言葉と心情が一致していないだろうことが、エリーゼには手に取るようによく分かった。

(それともアンドレアへの気持ちを自覚してないのかしら……?)

 確かに今の状況では、エドガーとアンドレアが仲良く結ばれる未来など、おとぎ話でもない限り無理な話だ。
 それでもエドガーには、アンドレアを搔っ攫うくらいの気概を持ってほしい。
 そう思うのはエリーゼのわがままだろうか。

 けれど、自分の気持ちに蓋をしてまで、エドガーがアンドレアの幸せを願うと言うのなら――。
 姉としては、神に祈らずにはいられない。

(どうかこの不憫な弟に、いつか真実の愛が訪れますように……)

 いずれこの願いが聞き届けられることを、エリーゼはまだ知らなかった。

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