ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
(ポールと子をなすこと? 公爵夫人として執務を続けること? ライラを追い出してプライドを守ること?)

 どれも貴族として正しい在り方だ。
 だがアンドレア個人の望みとは思えない。
 やりがいを感じていた領地経営も、今はストレスの種でしかなくなった。
 ポールはライラに甘すぎて、最近では散財の程度が許容範囲を超え始めている。

 ライラのように目利きができない貴族は、行商の者にとってはいいカモだ。
 先日も大金で安物を掴まされそうになったところを、アンドレアが直前で阻止したばかりだった。
 ため息をつきつつ次の書類を手に取った。
 どんなに利益を上げたとしても、無駄遣いされるだけならやる気も削がれるというものだ。

 そのとき乱暴な足取りでライラが執務室に飛び込んできた。
 鬼のような形相で、怒り狂っているのが見て取れる。

「ここは執務室よ。遊びたいなら余所へ行って」

 一瞬ちら見して、アンドレアはすぐさま書類に視線を戻した。
 遠巻きに見守る使用人たちも困惑顔だ。
 執務に携わる者たちは、アンドレアの方がいかに正しいかをよく分かっている。

「ふざけないで! ポールがライラに買ってくれた宝石をお姉様が横取りしたんでしょう!?」
「あんな粗悪品、手に取る価値もないわ。あの行商は出禁にしたからそのつもりでいて」
「そんなこと言って、ライラばっかりポールに可愛がられるものだから、お姉様、ライラに嫉妬しているんでしょう?」

 いつもの戯言に、うんざりしてアンドレアはため息をつくしかなかった。

「くだらないことを言ってないで、早く出て行きなさい」
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