ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 握ったままだったエリーゼの手を、アンドレアはさらに強く握り込んだ。

「ほら、敵を欺くにはまず味方からって言うでしょう? 医師にだけ協力してもらって、あとはみんなわたくしの病気を信じているわ。だからアンドレアも演技を続けてね?」
「全部わたくしのために?」

 頷いたエリーゼを見て、違う意味で涙目になった。

「面会謝絶の状態なら、監視役の侍女を簡単に追い出せるでしょう? あの侍女、前の時は扉に耳を押し当てて、ずっと聞き耳を立ててたらしいのよ」
「そんなに? ポールに大金でも積まれたのかしら……」

 もしくは何か脅されでもしているのか。
 そうでなければ、そこまで執念深くはなれなさそうだ。

「でもここでなら心置きなく話ができるわ。それで最近の状況はどうなの? 何か困ったことになっていない?」
「それが……」

 アンドレアは昨日の出来事を包み隠さずエリーゼに話していった。

 シャンデリアの事故。アンドレアを庇って負傷したマリー。意味深なライラの言葉。
 そして禁断の蓋を開けて聞いた、ポールとライラの信じ難いやり取りの一部始終。

 話が進むごとに、エリーゼの顔に怒りが宿っていく。
 自分のために怒ってくれるひとがいる。
 それだけでアンドレアは、心が救われる思いだった。

 そして同時に勇気が湧いてくる。
 夕べした決意を。そしてこれから上げる反撃の狼煙(のろし)を。
 揺らぐことなく、アンドレアは正直にすべて打ち明けた。

「アンドレアの気持ちはよく分かったわ。任せてちょうだい。わたくしが全部上手いこと状況を整えるから。アンドレアはいつまでケラー家に滞在できそう?」
「そうね……エリーゼが生死の境をさまよっている前提なら、一週間ほどは粘れるかしら」

 領地経営の執務は優秀な使用人が揃っているので、アンドレアはそれほど心配はしていなかった。
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