ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 手首を掴まれ、エドガーに向き合わされる。
 言葉を発する前にアンドレアは口づけられた。
 驚きで身じろぐも、首元に、背に、大きな手が回って逃げることも叶わない。
 苦しくてエドガーの胸を懸命に押した。
 触れ合う唇に少しだけ隙間を作ると、エドガーは苦笑いを向けてくる。

「そんなに硬くならないでくれ」
「だって息が苦しくて……」
「鼻で息をすればいい」

 ふっと笑って、鼻先に軽いキスを落とされる。
 すぐに深い口づけが始まって、翻弄されるままアンドレアはエドガーの胸に縋りついた。
 息も絶え絶えのアンドレアに対して、エドガーは随分と手慣れている様子だ。
 それが少しばかり面白くない。
 だがどうすることもできなくて、アンドレアはエドガーの口づけを受け入れた。

 エドガーの手が背中を滑り落ちていく。
 思わずアンドレアは身を強張らせた。

「俺が怖いか?」
「ち、違うわ。エドガーもエリーゼから聞いたでしょう? その、わたくしずっと白い結婚で……」

 言い訳のようにそう口にすると、エドガーが息を飲んだのが分かった。

「もしかしてエリーゼはその話をしていないの……?」
「ああ、初耳だ」
「だったら、今分かったでしょう? だからわたくしこういうことに慣れていないのよ」

 この年にもなってと笑われるかと思ったが、エドガーはアンドレアを性急に抱きしめた。

「ああ、分かった。ちゃんとやさしくする」

 そうでなかったら、やさしくする気はなかったのだろうか。
 そんな疑問が湧いて来るも、すぐに甘い口づけに溶かされていく。

「ずっとアンドレアのこんな顔が見たかった」

 うれしそうに言ったエドガーを、アンドレアは潤んだ瞳で見つめ返した。

(こんな顔ってどんな顔だというのよ)

 気恥ずかしくて、アンドレアは無意識に唇を尖らせる。

「なんだか随分とうれしそうね」
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