ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「当然だ。うれしいからな」

 やわらかく笑ったエドガーは、本当に心からうれしそうだ。

「なによ、昔はもっと素っ気なかったくせに」

 婚約時代にもアンドレアは、何度かエドガーに口づけられたことはある。
 だがキスはいつも唐突で、唇が軽く触れたあとエドガーは興味なさそうにすぐに離れて行った。

「それは……わざとだ」
「わざと?」
「ああ、下手に手を出したら我慢ができなくなると思った。それだとアンドレアも困っただろう?」

 今さらのようにエドガーの本心を知らされて、動揺でアンドレアは瞳をさまよわせるしかない。

「今思えば、あのときアンドレアのすべてを奪っておけばよかったんだ……」

 真剣な眼差しのエドガーは、苦しげに顔を歪ませた。
 エドガーは今でも婚約破棄されたことにわだかまりを感じている。
 それが伝わってきて、アンドレアの決意は激しく揺さぶられた。

 このまま上手くことが進めば、エドガーの子をポールの子として育てていくことになる。
 そうなるとエドガーは赤の他人だ。その子に一生関わることができなくなってしまう。

「やっぱり貴方をこれ以上巻き込むわけには……」
「俺があの日――アンドレアを妻に迎える日を、どれだけ心待ちにしていたと思っている」

 遮るように言われ、アンドレアは口をつぐんだ。

「俺はアンドレアを奪われた」

 その瞳の奥には、隠しきれない怒りの炎が燃え盛っている。

「アンドレアのためだけじゃない……この復讐は、俺のための復讐でもあるんだ」

 そこには一切の迷いも嘘も感じられなかった。
 エドガーもまた、苦しい現実を背負い続けてきたのだ。
 それを思うと、アンドレアの胸はどうしようもなく締めつけられた。

「だからアンドレアが気に病む必要はない。存分に俺を利用すればいい」

 頷いて、アンドレアは自らエドガーに口づけた。
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