ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「アンドレア……今だけは、俺のものだ……」

 互いの熱を分け合うように、アンドレアとエドガーは最初で最後の愛を交わした。


 ♱ ♱ ♱


 身支度を整え、アンドレアはエリーゼの寝室から出た。
 待たせている間、見張り役の侍女は睡眠薬を使って眠らせてあった。

 ソファで眠る侍女を揺さぶり起こすと、眠い目をこすって侍女は目を覚ました。
 はっとした侍女が、時計を確かめるのが分かった。
 時計は針を回して細工を施してある。アンドレアがエリーゼの寝室に入ってから、一時間も経っていない時刻のはずだ。

 居眠りをして監視を怠ったことがバレたら、ポールの逆鱗に触れかねない。
 ほっとした様子で、侍女はアンドレアにへつらうような笑みを向けた。

「アンドレア様、今日のお見舞いはもうよろしいのですか?」
「ええ、エリーゼも眠っているし、今日は早め切り上げたわ」

 薬が抜けきらないのか、侍女は懸命にあくびをこらえている。

「あなたもずっとわたくしにつき添って疲れがたまっているでしょう? わたくしの世話はいいから、今日はもう休んでちょうだい」
「ですが……」
「大丈夫よ。わたくしももう眠るから」

 アンドレアの体力も限界で、早く休みたいのは本当のことだった。
 何よりもこのまま侍女が眠ってくれれば、ずらした時計に気づかれることなく明日の朝を迎えてしまえるだろう。

 子供ができたときに、エドガーが父親だと疑われては元も子もない。
 アリバイ作りは完璧にしなければならなかった。

(でもこれでエドガーと過ごした時間は誰の記憶にも残らないわ)

 重い体を横たえ、その夜アンドレアは夢も見ずに深い眠りに落ちた。

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