ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 それももう、ここでお終いになる。
 口元に上品な笑みを()き、アンドレアはすぅと大きく息を吸った。

「皆さん、今日はポールのために集まってくださって感謝ですわ」

 よく通る声を、会場に響かせる。
 注目が集まったところで、ゆっくりと貴族たちの顔を見回した。

「今日は皆さんにとてもうれしいお知らせがありますのよ」

 言いながら、アンドレアはポールの腕に手を絡ませた。
 仲睦まじげなふたりの様子を、誰もが好意的に見守っている。

「わたくしたち、子ができましたの。この良き日にお知らせできて、わたくし本当にうれしいですわ。皆さんも一緒に祝ってくれますでしょう?」
「なっ」

 不自然なポールの叫びは、貴族たちのどよめきに掻き消された。

「な、何を言っているんだ、アンドレア」
「あら、安定期に入ったことだし、医師にも皆に知らせても良いと言われたじゃない。もう秘密にしておく理由もないでしょう?」

 無邪気に微笑んで小首を傾げた。

「ポール様、これでシュナイダー家も安泰ですな」
「いや、それは」
「おめでとうございます。本当に喜ばしいですわ!」
「待て、ちが」
「亡くなられたお父様もきっとおよろこびになられますね」
「だから違うと……」

 周囲からは次々と祝いの言葉が浴びせられていく。
 お祝いムードはあっという間に会場全体に広がっていった。
 今日招いた貴族は相当数だ。
 これだけアンドレアの妊娠が認知された状況を、いかにポールでも覆すのは困難なはずだ。

 動揺しきっているポールのそばに、すかさずケラー侯爵が近寄って来る。
 声を潜め、アンドレアに探るような視線を向けてきた。

「アンドレア……その話は本当なのか?」
「お父様。ええ、わたくしたちの子はこのお腹で順調に育っていますわ」

 腹に手を添え、慈愛の笑みを口元に乗せた。
 その言葉を横で聞いていたポールが激高しそうなところを、ケラー侯爵は咄嗟に制した。
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