ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「ポール様は少し酒が回り過ぎているご様子。うれしい席ではありますが、少し静かな場所で休まれては?」

 使用人に支えられ、ポールは先に会場を出て行った。
 これで今日の主役はアンドレアとなった。
 アンドレア懐妊の報は、しばらく社交界でもちきりになることだろう。

「ふふ、ポールったら、よろこびのあまり興奮し過ぎね。わたくしたちは先に下がるけれど、皆さんは気にせず最後まで楽しんでらしてね」

 祝福の言葉を贈られながら、アンドレアもそのあとを追っていく。
 すべてが理想の展開で進んだことに、アンドレアは神に感謝した。

 会場の喧騒が耳の届かない部屋に入ると、真っ赤な顔をしたポールが仁王立ちで待っていた。
 さすがに酔いは醒めたようだが、顔が赤いのは怒りゆえのことだろう。

「一体どういうつもりだ?」
「どうもこうも、皆の前で言った通りよ」
「ふざけるな! 相手の男はどこの馬の骨だ!」
「……どうしてそんな酷いことを言うの? このお腹の子は正真正銘ポールの子よ」

 ポールがいつ暴れてもいいように、この部屋の外にあらかじめ屈強な男を集めてある。
 ほかには侍女のマリーだけが、心配そうにふたりの様子を見守っていた。

「そんなことあり得るわけないだろう! そうか……ケラー家に帰っている時だな?」

 はたと何か気づいた様子で、ポールは大声で使用人を呼んだ。

「おい、アンドレアに付けたあの侍女を連れて来い! 今すぐにだっ」

 ほどなくして監視役の侍女が連れてこられた。
 激昂するポールを前に、侍女は真っ青になってその場に膝をついた。

「な、何かご用でしょうか、旦那様」
「何かではない! アンドレアを見張るように言ってあっただろう! ケラー家でこいつはどの男と過ごしていた? 正直に言え!!」
「お、男でございますか?」

 困惑したように侍女はポールの顔を見上げた。
 睨まれて、すぐに目を泳がせる。
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