ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「ケラー侯爵家に滞在中、アンドレア様はずっとエリーゼ様の看病をされていて……男と会っている暇などございませんでしたが……」
「嘘を言うな! だったらなぜアンドレアは身籠ったと言うのだ!」

 怒鳴られて、侍女はびくっと身を震わせた。
 ポールのあまりの剣幕に、泣きながら床に触れ伏した。

「そうおっしゃられましても、アンドレア様は献身的にエリーゼ様に付いておられました。本当にご心配をされているご様子でしたし、アンドレア様が男に(うつつ)を抜かしていたなどわたしには考えられません」

 すすり泣く侍女に、ポールは思い切り舌打ちをした。
 出て行くように命じられ、逃げるように部屋を飛び出して行く。
 あの侍女には日々やさしい言葉掛けを心がけてきたアンドレアだ。
 虚偽の報告をされなかったことに、ひとまずほっと胸をなでおろした。

「わたくしは潔白だと言ったでしょう?」
「くっ、女狐が。調べ尽くしてその化けの皮をすぐにでも剥がしてやる」
「あら、大丈夫なの? もし仮にわたくしが不貞を働いたとして、シュナイダー公爵ともあろうお方が他の男に妻を寝取られただなんて……」

 にっこりと、満面の笑みを刷く。

「そんなこと、みっともなくって言えないわよね?」

 一瞬言葉を失ったあと、よく聞き取れない捨て台詞を吐きながらポールは部屋を出て行った。

「アンドレア様……」
「心配はいらないわ、マリー」

 復讐は始まったばかりだ。
 この話を聞いたらライラも黙ってはいないだろう。

(だけど――)

 ひとまずは完全勝利を収めることができた。
 言いようのない高揚感に包まれて、アンドレアはまだ実感の薄いお腹にそっと手を当てた。
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