ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「それは……もうしばらく時間をくれないか? ライラは少々甘やかして育ててしまってな。今花嫁修業をさせているところだ」
「花嫁修業? そんなもの必要ありませんよ。わたしとしては跡取りさえ産んでもらえれば、身一つで来てくれるだけで十分ですよ?」

 なんとか言い訳をつけて逃げようとするケラー侯爵を、エドガーは害のなさそうな笑顔で追い詰めていく。

「いや、しかしだな……ライラはそれなりの結婚式を望んでおって……」
「それはご心配なく。こちらで()()豪華なものを段取りいたしますので」

 アンドレアの時もエドガーは相当の手間と金をかけて準備した。
 それを婚約破棄を告げる書類一枚で台無しにされたのだ。
 含ませた嫌味に、ケラー侯爵もこれ以上強く出られなかったようだ。
 一瞬言葉を詰まらせたあと、苦い顔を向けてくる。

「分かった。ライラにも伝えよう。だがあと一年は待ってくれないか?」

 一年もすればアンドレアの子が生まれているだろう。
 その子が本当にポールの子なのか、ポールがそれを素直に認めるのか。
 成り行きによって、ライラの立ち位置が変わってくる。

(見極めのための一年か……やはりタヌキ親父だな)

 そんなことを胸中で思いながら、エドガーはにっこりと笑顔を作った。

「ええ、もちろん。式の準備も時間がかかりますからね」

 猶予期間を与えられ、ケリー侯爵は少しほっとした様子だ。
 しかしエドガーは一年丸々待ち続けるつもりはまったくなかった。

「これからはもっとライラと時間を取りたいと思っています。ライラにも式やドレスの希望があるでしょうから」
「それはまだ気が早いのでは……」
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