ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「いやいや、豪華な式を挙げるとなると一年なんてあっという間ですから。一年後ライラをシュミット侯爵家に迎えるために、わたしも頑張らせていただきますよ」

 本当は一日でも早く、ライラをシュナイダー家から遠ざけたかった。
 アンドレアにとっては、きっと長い一年になることだろう。
 己の力のなさに憤りを感じてしまう。
 エドガーはなんとか自分に言い聞かせた。

(俺は俺にできることをするしかない)

 結果それが、偽りの人生を歩むことになるのだとしても。
 誰よりも大切なアンドレアのために――。


 ♱ ♱ ♱


「なぜ証拠がひとつも出てこない!」

 調査結果の紙の束を投げ捨て、ポールは怒りで震えを止められないでいた。
 自分の誕生日を祝うめでたい日が、人生で最も屈辱なものとなってしまった。
 あれから一週間、シュナイダー家の屋敷内やアンドレアが長期滞在していたケラー侯爵家、そして領地経営で携わった相手など、ありとあらゆる場所でのアンドレアの動向を調べ尽くした。
 それなのに調べれば調べるほど、アンドレアが潔白なことが明白になってくる。
 だがポール自身、アンドレアと子ができるような行為は一切行っていない。
 それだけは確かだった。

(あの女狐め……)

 どんな狡猾な手段を取ったのか。
 まもなく国王となる自分を(たばか)るなど、断じて許されることではない。

「ならば流すしかない、か……」

 呟いて、ポールは独り仄暗く嗤った。
 アンドレアにはまだまだ利用価値がある。
 なんとしてでも腹の子を堕ろさせ、どちらが上かを思い知らせてやらねばならない。

「ふ……はははっ、今に見ていろよ、アンドレア」

 苦痛に顔を歪ませるアンドレアを思い描き、しばしポールは恍惚な表情で悦に浸っていた。
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