ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 自分が得すること、こと卑劣な手法に於いては、アンドレアも驚くほどの頭の良さを発揮するポールだ。

「貴女の家の借金はわたくしがなんとかしてあげるわ」
「えっ」
「そのかわり、ポールへの報告は今まで通り行ってちょうだい」
「え、ですが……」

 驚きの表情はすぐに困惑へと変わった。

「その上で、ポールとライラの言動もわたくしに報告して欲しいの。どう、できて?」

 借金を肩代わりする交換条件として、二重スパイをやれということだ。
 アンドレアに罰せられ、さらにポールの怒りを買って借金も残ったまま。それに比べたら良心的で随分とマシな選択肢だろう。

「は、はい! わかりました、誠心誠意尽くさせていただきますっ」
「とりあえずこの茶の件は、マリーに気づかれてわたくしは飲まなかったと、そうポールには報告しておいて」
「かしこまりました!」

 急いで出て行った侍女を、マリーは複雑そうに見送っている。

「許してしまってよろしかったのですか?」
「いいのよ、味方は多い方がいいわ」

 彼女はアンドレアの思惑通りに、ケラー家でのエドガーとの逢瀬に気づくことはなかった。
 ポールへの証言もアンドレアを庇うものだったし、根は悪い人間ではないのだろう。

「マリーはわたくしのお腹の子が何者かに狙われたと、屋敷中にそう触れ回ってちょうだい。そうすればポールも少しは動き辛くなるでしょう?」

 シュナイダー家の混乱に乗じて、そのあとすぐにアンドレアは祖父に(ふみ)をしたためた。
 内容はやはり腹の子に毒を盛られたと泣きつくものだ。
 国王の名を(たばか)ったとなると、祖父も何かしら手を貸してくれるかもしれない。
 過剰な期待はせず証拠のホオズキとともに手紙を送ったが、病床にいるとは思えない速さで祖父はアンドレアの期待以上に動いてくれた。

 後日すみやかに王命が下され、王城から騎士や世話係、調理人に至るまでがシュナイダー家に派遣されることになった。
 国王の血を引く子を守るため、アンドレアは万全の態勢で出産までのときを過ごせるようになったのだった。

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