ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「茶の名前は分からないの?」
「確か……ホーズキとかいう名だったかと」
「ホーズキ? やっぱり知らない名ね」

 せっかく祖父が贈ってくれたものだ。
 ひと口含もうとすると、マリーがいきなり横からカップを取り上げてきた。

「お待ちください、アンドレア様……!」
「マリー、急にどうしたのというの?」

 彼女らしくない乱暴な行為に驚いた。
 だが理由もなしにマリーがこのようなことをするはずもない。

「東の国で咳止めや熱冷ましに用いられている生薬に、確かホウズキというものがございました」
「生薬……? ではこれは薬膳茶ということ?」
「おそらく。ですがホウズキには子を流す作用があり、妊婦には禁忌とされています」
「……それは確かなのね?」
「間違いありません。そのように母から教わりました」

 マリーの母親は王女付きの侍女を長年務めていた女性だ。
 王族を危険から守るために、毒に関する知識を豊富に持ち合わせていた。
 そのため娘のマリーもそれを母から学び、アンドレアのために日々生かしてくれている。

「これは一体どういうこと?」

 一部始終を見ていた見張り役の侍女に問う。
 震えながら、侍女は床にひれ伏した。

「わ、わたしは旦那様にこれをアンドレア様に飲ませるよう言われただけです!」
「ポールに? では国王からというのも嘘なのね?」
「いえ、聞かれたらそのように答えろと。わたしは中身が何かも知りませんでした! どうぞお許しくださいっ」

 泣きながら床に頭をこするつける侍女を、マリーは冷たく睨みつけている。
 しかしアンドレアは穏やかな口調で顔を上げるように言った。

「あなたがずっとポールにわたくしの言動を報告していたのは知っているわ」
「も、申し訳ございません!」
「あなたのことを少し調べさせてもらったのだけど……」

 アンドレアの言葉を聞いて、侍女は絶望の顔をした。
 この侍女はそれなりの家の子女で、父親の借金の形で半ばポールに脅されて使われていることが分かった。
 その借金も仕組まれて作らされたもののようだった。

(ポールのやりそうなことね)
< 66 / 138 >

この作品をシェア

pagetop