ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「はい、アンドレア様も一度お会いになられたと思いますが……」
「エドガー・シュミット様が取引先とより良い条件で契約を結んだり、懇意にしていた商会を買収したりで……」
「まぁ、あのときの彼ね?」

 動揺を隠し、アンドレアはあくまで公爵夫人としての態度を保った。
 詳しく話を聞くと、様々な案件で先回りするようにエドガーに出し抜かれているということらしかった。

「そうね……」

 思いを巡らせるが、どれも一手先を読んだエドガーが正攻法で動いているだけのことだった。
 それに対しシュナイダー家も臨機応変に対応できていて、大きな損害が生じているわけでもない。

「起きたことは仕方がないわね」
「我々の力が及ばずで申し訳ありません」
「そんなことはないわ。これは不測の事態だし、あなたたちは随分と上手くやれているわ」

 どうやらエドガー自らが動き回っていて、シュナイダー家は後手後手に回らされているようだ。
 結果、下の者のスキルが格段に上がってきているようにも思えた。

(まるでエドガーが、どんな事案にも対応できるように鍛えてくれているみたいね)

 本人にはそんな気はないかもしれないが。
 エドガーの真意はむしろ、適度にシュナイダー家の足を引っ張ることで、自分が腹の子の父親だと疑われないようにするためのものではないだろうか。
 その方がしっくりとくる。使用人鍛え説は、どうやら副産物のおまけらしい。

(それにしてもエドガーがうらやましいわ……)

 アンドレアも自由に市場を動き回れていたら、もっと事業を拡大できただろうに。
 エドガーが聞いたら苦笑いしそうなことを、アンドレアは胸の内で思ったのだった。

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