ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 ポールにもライラを連れて来いと何度も急かされていた。
 そろそろライラを戻さないと、彼の機嫌を損ねてしまうかもしれなかった。
 しかしライラはまだアンドレアの懐妊を知らないでいる。
 ライラが戻れば、シュナイダー家でまた一波乱起こるに違いない。

(アンドレアめ、まったく余計なことをしおって……)

 忌々しく思って、ケラー侯爵は険しい顔になった。
 アンドレアが宿した子の父親が、ポールならそれでいい。
 ところがポールの反応を見ていると、その可能性は限りなく薄そうだ。

「シュナイダー家には近々連れて行く。それまでは大人しくしていてくれ」
「もう、分かったわ。わたし、ポールなしじゃ生きていけないの……だから早く会わせてね、お父様!」

 無邪気に笑うライラはまだ扱いやすい。
 だがアンドレアは昔からそうはいかなかった。

 近年のアンドレアは益々死んだ母親に似てきている。
 妻に娶ったはずのあの女は、いつまで経っても王女気取りを続けていた。
 夫であるケラー侯爵は最後まで家臣のような扱いだった。

(アンドレアを見ていると、あの女を思い出す)

 居丈高で小賢しいところなどそっくりだ。

 ポール・シュナイダーは次の国王に一番近い男だ。
 王太子がいるにはいるが、奴は腰抜けで恐らく即位を辞退する。
 正直なところポールの子を産みさえすれば、それはアンドレアでもライラでもどちらでも構わなかった。
 そうすればケラー侯爵はポールの跡を継ぐ子供の祖父となれる。
 そして、その子はいずれ王位に立つだろう。

(――そう、晴れて俺の血を引く国王の誕生だ)

 その暁には、二度とあの女に引け目を感じることはない。
 同等の、いやそれ以上の立場で、あの女に勝ることができるのだ。

 ひとりほくそ笑み、ケラー侯爵は策略を巡らせた。
 アンドレアとライラには、自分の手駒としてまだまだ上手く働いてもらわねばならない。
< 73 / 138 >

この作品をシェア

pagetop