ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 ポールの言葉に、アンドレアは血の気が引いた。
 無意識に、我が子が宿る腹に手を当てる。

「挿げ替える? お姉様の産んだ子とライラの子を入れ替えるってこと?」
「そうだ! そうすれば俺とライラの子を正式な跡取りとして育てられる!」
「挿げ替えた子は? どうするの?」
「そんなものどこか里子に出してしまえばいい。なんなら殺してしまおうか。ああ……それがいい、我ながら名案だ……!」

 興奮するポールに、ライラも甲高い笑い声をあげた。

「でももし性別が違ったら?」
「アンドレアは男女の双子を産んだとでもしておけばいい。ライラの産む子供だけが俺の子だ。残りは途中で死んだと周りには適当に言えばいいのさ!」
「天才! さすがはポールね!」
「よし、そうと決まったら早速子作りだっ」
「やぁん、ポールぅ!」

 無言で片手を上げたアンドレアの合図に、素早く応えたマリーが音もなく壁の蓋を閉じた。
 部屋が静寂に包まれる。
 あまりのことに、アンドレアもマリーも言葉を失っていた。

「ねぇ、マリー……わたくしは悪魔と戦っていたのかしら」

 絞り出すようにアンドレアはようやく言った。

(この子が生まれたら、この辺で復讐は終えてあげようと思っていたのに……)

 自分の認識の甘さに、アンドレアは心から悔いていた。
 温情をかけるなど、もうそんな生ぬるいことを言っている場合ではない。
 エドガーとの愛しい子供は、これから先ずっと命を狙われ続ける運命だ。

(ふたりを完膚(かんぷ)なきまでに叩き潰さない限り――)

 その時芽生えたのは、新たな決意だったのか、殺意だったのか。
 アンドレアにももう分からなくなっていた。

< 79 / 138 >

この作品をシェア

pagetop