ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 まだ若いポールにシュナイダー家を束ねるのは難しい。ケラー侯爵家の後ろ盾が必要なのだと強く説得してきたのは目の前にいる父親だ。

「お言葉ですが、お父様。もうシュナイダー家にはケラー家の後ろ盾は必要ないのでは?」
「ポール様がライラをお望みだ」
「だったらライラと再婚させればいいでしょう!?」
「初めはそういう話だった。この三年でアンドレア、お前がポール様の子を身籠ってくれればよかったものを……」
「え?」

 信じられないものをみるように、アンドレアはケラー侯爵の顔を見た。
 初めはそういう話だったということは、初めからそういう話だったということだ。
 最初からポールは離婚前提でアンドレアと結婚し、ライラが成人したら追い出す心づもりだったのか。
 それを父親のケラー侯爵も了承し、その上でアンドレアを嫁がせた。
 この茶番は、三年前からすでに始まっていたのだ。

「だったら初めからライラと結婚させればよかったじゃない!」
「当時ライラは十五歳だ。婚約では後ろ盾が弱すぎる。どうしてもお前との婚姻が必要だった」

 淡々と言われ、アンドレアの口から乾いた笑いが漏れて出る。

「お母様がこの話をお聞きになったら、一体どう思われるかしら……」
「あれの話はするな!」

 荒げた声には苛立ちが混ざっていた。
 父と母も政略結婚だった。王女だった母が降嫁して、ケラー侯爵家に嫁いだ形だ。
 父も何かと意に沿わないことを強いられてきたのかもしれない。
 今なら分かる。父が後妻に選んだのは、自分好みの女性だったのだろう。
 ライラの母親はあまり教養のない下位貴族の出で、父の意のままにできる、そんな気弱な女性だった。

「さっきも言ったが、お前が女としてもポール様を虜にしていれば、この話はなかったことにできたんだ」
「お父様はわたくしが悪いとおっしゃるの?」
「そういうことだ。せめて領地経営では貢献し続けろ。絶対に失敗は犯すなよ?」

 そう言い捨てて、ケラー侯爵は先に部屋を出て行った。

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