ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 お腹の子のためにも、自分の体力づくりのためにも、アンドレアは進まない食事をなんとか採るよう心掛けた。

 アンドレアのお腹もだいぶ目立ち始めるようになったころ、ケラー侯爵家から義姉のエリーゼが見舞いに来ることになった。
 仮病だが、大病を患っていたエリーゼは奇跡的に回復したということになっている。
 ポールにはヘレナを通じて、二児を産んだ母として義妹のアンドレアを励ますために来る予定だと報告をさせておいた。

「アンドレア、調子は……あまり良くなさそうね?」
「これでも最近はましな方なの。でもなんとか食べてはいるわ」

 自室の居間に招き、エリーゼはやさしくアンドレアを抱きしめた。
 ふわりとした何とも言えない温もりに、幼い日々の母の思い出が蘇る。
 うっすらとアンドレアの瞳に涙がにじんだ。
 そのときにどれだけ自分が心細い思いをしていたのかを、ようやくアンドレアは自覚した。

「駄目ね……わたくし、これから母親になるというのに……」
「妊娠中だもの。心が弱くなるのは誰でも起こることよ」

 穏やかに微笑んで、エリーゼは再びアンドレアを抱きしめてくれた。
 その様子をマリーと並んで眺めていたヘレナが、遠慮がちに声をかけてきた。

「ではわたしは一度退室いたします」
「ええ」
「旦那様には、わたしはきちんと見張っていたと報告しておきますので」
「そうしてちょうだい。ありがとう、ヘレナ」
「奥様のためならお安い御用です。何かありましたらいつでもお呼び立てください」

 そう言って、ヘレナはニコニコ顔で部屋を出て行った。

「あの侍女って、見張り役をしてた侍女よね?」
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