ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 いつでも寛大で、やさしかった伯父を思い起こした。
 アンドレアの瞳から大粒の涙が溢れ出す。

「アンドレアはね、十分頑張ったわ。だからもう、シュナイダー家から解放されたって良いとわたくしは思うの」

 エリーゼに頬の涙を拭われる。

「いますぐ答えは出ないだろうから……出産まではまだ間があるし、自分がどうしたいかもう一度ゆっくり考えてみて」
「ええ……ありがとう、エリーゼ……」
「どんな答えでも、わたくしもエドガーも、全力でアンドレアの力になると誓うわ」

 そう言ってエリーゼは、涙の残るアンドレアの目尻にそっと口づけを落とした。
 ひとしきり泣いたあと、エリーゼはまた来ると言って後ろ髪を引かれるように帰っていった。

(わたくし、この家でポールたちと戦うことばかりを考えていたわ……)

 視野の狭さはそのまま選択肢の狭さに直結してくる。
 いかにして俯瞰して見られるかは、問題解決に於いてとても重要なことだ。

(領地経営では常に頭に入れていたはずのに)

 しかも使用人たちにいつも口を酸っぱくして伝えていたことだった。
 それなのにいざ自分のこととなったら、なんという(てい)たらくだろうか。
 そんなふうに思ったら、アンドレアは体の力が抜けてきた。
 急におかしさが込み上げてきて、ひとりくすくすと笑いをこぼした。

「そうね、まだ時間はあるものね」

 少なくともライラの子が産まれるまでは、ポールが大きく動くことはないはずだ。
 射して来た希望の光に、その夜アンドレアは久しぶりに朝までぐっすりと眠れたのだった。

< 83 / 138 >

この作品をシェア

pagetop