ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 どうしても解決できない事案を相談されることは今もあるが、アンドレアがいなくなったあとは何とか自力で乗り越えてもらうしかない。

「準備が整ったら、すぐにでも実行に移すつもり」
「ええ、こちらもいつでも動けるようにしておくわね」

 開いたままのドアの向こうから、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
 はしゃぎ声からすると、かくれんぼはいつの間にか鬼ごっこに変わったようだ。
 その中に男の声が混じっているのに気付き、アンドレアは小首をかしげた。

「あれは誰かしら?」
「ああ、あれはケラー家から連れてきた護衛よ。跡取り息子を連れて行くから一応と思って」

 言いながらエリーゼは立ち上がった。

「彼をアンドレアに紹介してもいい?」
「ええ、もちろんよ」

 甥っ子の護衛なら、今後も長い付き合いになるかもしれない。
 そう思ってアンドレアはすぐに頷いた。

「アンドレアはそこにいて。今こちらに呼んでくるから」

 ソファに座って待つ間、アンドレアはだいぶ大きくなったお腹に手を当てた。

「あ、今動いたわ」

 内側から軽く蹴られたような感覚だ。
 順調に育つ我が子を感じて、アンドレアの唇が弧を描く。

「失礼」

 コンコンと開いたままのドアをノックされて、アンドレアは我に返って顔を上げた。
 ドアの前に護衛の男がひとりで立っている。

「エリーゼは……?」

 言いかけて、アンドレアははっとした。
 染めた髪で目元を隠しているが、そこにいた護衛はエドガーだったからだ。

「エド……!」
「しっ」

 指で制されて、慌てて口を手で覆う。
 忠誠を誓う騎士のように、エドガーはアンドレアの目の前で片膝をついた。

「調子はどうだ?」
「順調よ……というより、どうして貴方がここに……?」

 突然のことに放心状態でいると、エドガーが手を取って来た。
 ぎゅっと握られて、アンドレアの心臓まで大きく跳ね上がる。
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