ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「では、これならどうだ? 俺が王位に就いたらアンドレアとは離縁しよう。そうしたらライラを王妃として迎えてやれる」
「それ本当、ポール!?」
「ああ、ポール・シュナイダーの名にかけて、そのときはライラを妻にすると誓おう」
「きゃあ、うれしい! ポール、大好き!!」

 リネンから飛び出してきたライラが、勢いよく抱き着いて来る。

(俺が国王となったら、シュナイダー家は挿げ替えたライラとの子に継がせるとしよう)

 その子が成人するまでは、補佐としてアンドレアをこき使えばいい。
 なにしろそのときアンドレアは、ライラとの子供を自分が腹を痛めて産んだと勘違いしている状態だ。
 離婚後もあの女は、喜んで自らシュナイダー家に貢献することだろう。

(我ながら妙案だな)

 腕の中ではしゃぐライラをあやしながら、ポールはほくそ笑んだ。
 アンドレアの愚かな反逆は、ポールの栄光の道への序章に過ぎなかったのだ。

(小賢しい女の哀れな末路だな)

 そんなふうに思って、目の前の可愛いライラをポールは心行くまで抱きしめた。


 ♱ ♱ ♱


 平和な日々が続いていたそんなある日。
 ポールの元に血相を変えた家令が、悲鳴交じりに駆け込んできた。

「だ、だ、旦那様……!」
「何事だ、騒がしい」
「アっ、アンドレア奥様が……っ!」
「アンドレアが? 一体どうした?」

 不快感を顕わにするも、普段は冷静沈着な家令がこれ以上なく取り乱している。

「奥様が、お、お、お、奥様がっ」
「だからアンドレアがなんだというのだ!」 

 苛ついたポールは怒鳴り返した。
 そんなものは耳に入らなかったかのように、青ざめた家令は震える声を搾り出す。

「アンドレア奥様が早産をされて……たった今お亡くなりになられました……!」

 その報告は、半ば絶叫のように響き渡った。

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