ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 そして聞き取りにくかった祖父の声にも、アンドレアは心当たりがあった。
 あの籠った感じは聞き耳の蓋を開けたときの、ポールとライラの会話の聞こえ方にそっくりだったからだ。

 二回目の見舞いで祖父が蝋人形だったことを確かめた直後、本物の祖父が隠し扉を開けて現れた。
 そのときはさすがのアンドレアも悲鳴を上げかけてしまった。

「よくぞ見破った。アンドレアよ」

 そう言って、祖父は快活な笑顔を見せた。

「お爺様……ご病気というのは嘘でしたの……?」
「ああ、見ての通りだ」
「なぜこのようなことを……」

 呆気に取られて、やせ細った蝋人形と矍鑠(かくしゃく)とした祖父をアンドレアは交互に見やる。
 そんなアンドレアを見て、祖父は人の悪い笑みを浮かべてきた。

「なに、見極めのためよ。次に王冠をかぶるに相応しい者は誰であろうか……とな」

 言葉を失ったアンドレアに、祖父はすぐ真面目な顔つきとなった。

「して、アンドレア。ここに来た目的があるのだろう?」

 何もかもを見透かしているような口調だった。
 知った上で、祖父はただ静観していたのか。
 アンドレアも見極めの対象に入っているのだ。
 そんな気がして、真剣な眼差しでアンドレアはこれまであったすべてを包み隠さず打ち明けた。

「おじい様はわたくしに言ってくださいましたわよね? 自分の犠牲の上での平和は長続きしないと……」

 流されて、あとからやればよかったと後悔するのは嫌だった。
 ただひたすら誰かが助けてくれるのを待つだけなのも、アンドレアの性には合わない。
 そして、起こりもしていない失敗を恐れて、動けないでいることも。

「ですからわたくし、決めましたの。わたくしは自分でしあわせを勝ち取ってみせますわ。そのためにお爺様にお力添えをしていただきたいのです。どうかわたくしの願いをお聞き届けくださいませんか?」
「よかろう。アンドレアの心意気、(しか)と受け取った」
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