逃亡した帝国の公女は2人の王子に溺愛される。
「知っていたのね。私はサム国を守りたいの。今、帝国はアラン皇帝陛下に代わって、世界を侵略しはじめたわ。7カ国がこの半年で帝国領に変わったのよ。それに新しい帝国法も、他国の人間にはとても魅力的に映るはずだわ。成人した帝国民なら皆、帝国の要職に就けるチャンスを貰えるの。新しく宰相になったのは帝国にとっては敵国だったエスパルの平民出身の女性よ。おそらくこれから、どんどん優秀な人材が帝国に流れていくと思うの。他国の人間も帝国の要職試験を受けられるようになったら、サム国からも多くの人材が流れてしまうわ。サム国民は自分の国が一番優れていると思っている人間が多いと思う。でも、客観的に国を見たら既にサム国自慢の女性の権利でさえ帝国の方が保証されていることに気がつくはずよ。そんな時にレイモンド王太子が王位に継いで政務も適当に複数の女を囲ったら、国民の心はますます離れていくわ」

私が矢継ぎ早に話す言葉にハンスが戸惑っている。
無理もない、サム国の貴族の子が後継者として国のことを考え始めるのは12歳でアカデミーに入学してからだ。

「6歳の時、アゼンタイン侯爵夫妻が話していたのを聞いてからエレノアの正体は知っていたよ。それまではエレノアがあまりに貴族らしい振る舞いをするから、前世がお姫様だったのかと思っていた」
ハンスの前世はお姫様の言葉に思わず吹き出してしまう。

「ハンスには私の特別な秘密を教えようかな。私をサム国に逃がしてくれた恩人は皇帝陛下の婚約者のエレナ・アーデンなのよ」

私はハンスと同じように、私の前世があるかのように話してきた恩人の話をしようと思った。
今日はもう移動するには外も暗い。

この小屋で私の恩人の話を彼にしようと思った。
彼には私の考えを理解してもらった上で、私の一番の味方になってもらいたい。

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