宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 彼女の(のど)がこくりと鳴り、次いでアルコールの香りが辺りに立ちのぼった。はっとして箱に残る菓子を摘まみ上げる。軽く力を入れただけで、それはもろく崩れて中から液体がこぼれ出た。

「……もお、ヴァルトさま、もったいないですわ」

 舌足らずに彼女が言った。顔を真っ赤にしながら、ゆらりゆらりと揺れている。

 リーゼロッテはこの手首を掴んだかと思うと、崩れた菓子をジークヴァルトの指ごとパクリと口にした。次いで手に(したた)り落ちた(しずく)を、丹念にゆっくりと()めとっていく。赤い舌が肌を()っていく感触に、ジークヴァルトの全身は岩のように固まった。

 最後にちゅぽんと人差し指に吸いつくと、リーゼロッテがふうぅと甘い息をひとつ吐いた。それからジークヴァルトの手がぽいと投げ捨てられる。

 緑の瞳は、思い切り座っている。赤ら顔のまま、リーゼロッテはしばらく宙を見つめていた。

「あつい」

 言うなり肩にかけていたショールをはぎとった。夜着の胸元のリボンをしゅるりと(ほど)き、ボタンを上から順にはずしていく。

「いや、待て、何をする気だ」
「や、じゃましないでくださいませ」

 ぷうと頬を膨らませ、止めようと伸ばされた手を鬱陶(うっとう)しそうに払いのける。胸の(きわ)どいところまでボタンをはずすと「あっつい」ともう一度言って、手うちわでぱたぱたと胸元に風を送りだした。

 視線を感じたのか、リーゼロッテがあっけにとられているジークヴァルトの顔を見た。それから青い瞳が凝視する、自分の汗ばんだ胸元を覗き込む。

「りゅうのあざ……」

 ぽつりと言って、再び顔を上げた。かと思うといきなりにじり寄ってくる。

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