宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「わたくし、ヴァルトさまのりゅうのあざ、見たことありませんわ。どこ? どこにございますの?」
「あざなら鳩尾(みぞおち)にあるが……」
「みぞおちに……?」

 小首をかしげたかと思いきや、ジークヴァルトのシャツの(すそ)を無造作に(まく)り上げてきた。

「見たい。わたくし、見たいです。ヴァルトさまのりゅうのあざ、見てみたい」
「おい、いや、待て」
「だめ、見るの! ヴァルトさまばっかりずるい。わたくしのは見たことあるくせに」

 唇を尖らせながら、おぼつかない手がシャツのボタンを下から外していく。へその辺りまであらわになると、リーゼロッテは大きな瞳を輝かせた。

「しっくすぱっく!」

 意味不明な言葉を叫び、ぺたぺたと腹に触れてくる。

「すごい、すごい! ヴァルトさま、ふっきん割れてる! すごい! ふっきん、しっくすぱっく!」
「は、腹が割れていたら危ないだろう」

 動揺のあまり、リーゼロッテが何を言っているのかが分からない。いや、自分が何を言っているのかすらよく分からなかった。

 リーゼロッテはお構いなしに、どんどん上へと手のひらを(すべ)らせてくる。くすぐったいようでぞわりとする感覚に、ジークヴァルトは思わずその手首を掴み取った。

「いたっ」

 驚いて手を(ゆる)める。それをいいことにシャツは上まで開けられてしまった。

「りゅうのあざ……」

 鳩尾(みぞおち)にあるあざを、リーゼロッテは食い入るように見つめてきた。腹に両手をついたまま、確かめるように鼻先を近づける。今にも触れそうな唇から漏れた吐息が、いたずらに腹の皮膚をくすぐった。

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