宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-

第14話 受け継ぎし者 -後編-

「今日は王位継承の日ね……またパレードも行われるのかしら?」
「そのようですね。新しい王の誕生に、国中が沸き立っていますから」

 王子とアンネマリーが結婚した一年前も、王都の街でパレードが行われた。王家の馬車が大通りをゆっくりと進み、笑顔を保つのがたいへんだったとアンネマリーがこぼしていたのを思い出す。
 国民にとって、王族の姿を見ることのできる滅多にない機会だ。今回は新王即位とあって、さらに盛大なものになるに違いない。

「ああ、やっぱり戴冠式(たいかんしき)をこの目で見てみたかったわ」
 残念そうに言ったあと、リーゼロッテは遠くに思いを()せるように深いため息をついた。

「今度お会いした時にクリスタ奥様に儀の様子をお伺いしてみましょう。……そろそろ時間ですので、厨房に菓子を取りに行ってまいりますね」

 時計を確認してエラは部屋から出ていった。エラが来て以来、食事の給仕などはすべてエラに任せきりだ。おかげでヘッダとは顔を合わせずに済んでいる。

(でも今日、東宮に残っているのは、エラとわたしとヘッダ様だけなのよね……)
 王女は王位継承の儀のために、王城へと向かった。アルベルトは護衛のために一緒についていったようだ。
(クリスティーナ様はご病弱なのに、式典に出ても大丈夫なのかしら)
 時々は公務に参加していると聞くが、真冬の大聖堂はめちゃくちゃ寒い。式典に出るにはそれなりの格好が必要なので、厚着をするにも限度があった。

(去年のアンネマリーのお式では、ヴァルト様の外套(がいとう)(くる)んでもらったっけ)
 夢中になってアンネマリーの姿を目で追っていたら、いつの間にかジークヴァルトと二人羽織(ににんばおり)のような格好になっていた。

(どうりでまわりの視線が痛いと思ったのよね。あれは二人羽織というより完全にカ〇ナシだったわ)

 今さらのように赤面する。だがここずっとジークヴァルトには会えていなくて、しゅんと気持ちがしぼんでしまった。

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