宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「いいこと、リーゼロッテ。あなたはいつか大きな選択を迫られる。龍に選ばれた者として、その時はいずれ必ず訪れるわ」

 真剣に見つめられ、綺麗な菫色(すみれいろ)の瞳に吸い込まれそうになる。

「でも絶対に(まど)わされては駄目。誰かの言葉に従うのではなく、あなたの見たまま、感じたまま――その心に従いなさい。この言葉をよく覚えておいて」
「……はい、クリスティーナ様」

 催眠術にかけられたようにリーゼロッテは返事をした。

「これはあなたにあげるわ」
 ふいに差し出されたスノウドームを慌てて受け取った。

「よろしいのですか?」
「ええ、セレスティーヌお母様の形見だから、大切にしてちょうだいね」
「そんな大事なもの、わたくしいただけませんわ……!」
「いいのよ、わたくしにはもう必要のないものだから」

 静かに言われ、それ以上は断ることもできなくなる。

「明後日、わたくしは王城へ向かうわ。今回はあなたも連れて行くから、そのつもりでいてちょうだい」
「わたくしも……?」

 王女は定期的に行われる神事に参加していると聞いている。月に一度は王城へと行っているようだったが、リーゼロッテはいつも東宮で留守番をしていた。

「あなたがここに戻ってくることはもうないと思うから……そのつもりで支度(したく)なさい」
「え? では公爵家に帰れるのですか?」
「王城での神事が済めばそうなるはずよ」

 頷くクリスティーナを前に、リーゼロッテは瞳を輝かせた。

「もういいわ。下がりなさい」

 気もそぞろに部屋を辞し、ようやく帰る目処(めど)がついたことを、リーゼロッテはエラに笑顔で報告したのだった。






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