宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「ふぅ、ナイスアシストですぅ」
 大げさに(ひたい)をぬぐうと、ベッティはリーゼロッテに向けてにやっと笑った。

「ベッティ……!」
「なんだか大変な目にお合いのようですねぇ」

 勢いよく抱き着くと、よしよしと頭を撫でられる。

「心細かったことと思いますがぁ、眠り針の効果もそう長いものではありませんのでぇ、何がどうしてこうなったのか手短に話をお聞かせ願いますかぁ?」

 事の次第を涙ながらに説明すると、ベッティは深く頷いた。

「なるほどですぅ。カイ坊ちゃまの見立て通り、黒幕のにおいがぷんぷんですねぇ」
「一体ここはどこなの? わたくし、それすらも分からなくて……」
「ここは神殿の奥深くですぅ。わたしも目隠しをされたまま連れて来られたので景色などは見えなかったのですがぁ、まぁ大体の場所はつかめた感じですねぇ」
「やっぱりここは神殿なのね……」

 聞こえてくる(とむら)いの(かね)は、王城にいた時よりも遠く、東宮で聞こえる鐘の音よりも近く耳に届いた。王城に隣接する神殿の外れであるなら納得もいく。

「なんとかうまく逃げ出せないかしら?」
「ここはかなり奥まった場所なのでぇ、森ひとつ越えないと本神殿にはたどり着けませんねぇ。闇雲に飛び出すのは自殺行為かとぉ」
「そう……それにしてもベッティはどうしてここに?」

 反応から察するに、都合よく自分を助けに来たと言うわけではなさそうだ。

「まぁ、ちょっとした潜入捜査ですぅ。あいにく外部との連絡もすぐに取れない状況でしてぇ、申し訳ないのですがリーゼロッテ様は自力で頑張っていただけますかぁ」
「えっ!? ええ、そうよね……ベッティは大事なお役目で忙しいんだものね……」

 しゅんとうなだれると、ベッティはぷっとふき出した。

「とはいえできる範囲でお守りはいたしますよぅ。今のリーゼロッテ様の状況を放置したらぁ、きっとカイ坊ちゃまに叱られますからぁ」
「ありがとう、ベッティ。一瞬ひどいって思ったけど、やっぱりベッティは頼りになるわね」

 手を握り瞳を潤ませる。きょとんとなったベッティを前に、リーゼロッテは考え込んだ。

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