宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-

第24話 奪還ののろし

「今日もありがとう」

 窓辺にやってきた小鳥たちにお礼を言う。並べられているのは小さな木の実やドングリに似たナッツなどだ。時にきのこが添えられていて、そのたびにあの鼓笛隊(こてきたい)を思い出すリーゼロッテだった。

 雪の間から白いテンが顔をのぞかせていた。近づくとすぐに逃げてしまうが、あの子もよく赤い実を持ってきてくれる。極寒の冬は動物たちも食べる物に苦労しているだろうに、途切れることなく物資は届けられていた。

「リーゼロッテ様ぁおはようございますぅ」
「おはよう、ベッティ」

 いつものように夜が明ける直前にベッティがやってきた。この時間がいちばん動きやすいらしい。それでも危険はつきまとう。こんなふうにここへ来ていると知れたら、ベッティはただでは済まないだろう。

「ねぇベッティ。いざという時はひとりでも逃げてちょうだいね」
「見つかるようなヘマはいたしませんよぅ。そんな心配よりもぉ、リーゼロッテ様はしっかり体力つけてくださいませねぇ」

 言いながら手早くスープを作る。ベッティの説明では、騎士団が神殿を探っているとのことだった。場合によっては騒ぎの(すき)をついて、ここから逃げ出せるかもしれない。

「やっぱり今すぐ逃げるわけにはいかないのよね?」
「ここは本神殿からかなり離れていますからぁ。森を抜ける途中で捕まるかぁ、隠れている間に凍死するのがオチですねぇ」
「そう……」

 扉の鍵が開けられるならと淡い期待を持ってみたが、現実はそう甘くないようだ。

(でも諦めないわ! こうやってみんなの命を分けてもらっているんだもの)

 運ばれる大地の恵みは、どれも力を与えてくれる。体の底から湧き上がるエネルギーを、リーゼロッテは食べるたびに感じ取っていた。

「今日も卵はないんですねぇ」

 マンボウは来たり来なかったりで、あれ以来、卵を産むこともなかった。ベッティが来る頃にはいなくなってしまうので、マンボウの存在にベッティは半信半疑だ。

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