宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「ベッティ、ひとつ聞きたいのだけれど、この国の鶏って雄でも卵を産むのかしら……?」
「なぁにおっしゃってるんですかぁ。卵を産むのは雌鶏だけですよぅ」
「やっぱりそうよね。マンボウは立派な鶏冠がついているから、ずっと雄鶏だと思ってたのだけど……」
「雌鶏に大きな鶏冠はないのではぁ? 本当にソレ、ニワトリですかぁ?」
「だってクリスティーナ様も鶏とおっしゃってたもの……」
体はひとまわり大きいが、マンボウはどこからどう見ても鶏にしか見えない。
「クリスティーナ様がぁ? またどうしてそんなことをぉ?」
不思議そうなベッティに、マンボウは東宮にいたことを説明した。祖父であるフリードリヒに贈られて、王女が可愛がっていたことも。
「そういえば聞いたことがありますねぇ。直系の王族はみな、伝説の聖獣を受け継ぐんだそうですよぅ」
「伝説の聖獣?」
「クリスティーナ様は不死鳥を、第二王女のテレーズ様は聖なる犬を、ハインリヒ王は神の猫を賜ったって話ですぅ」
「ふ、不死鳥!? わたくし、マンボウの卵、食べてしまったわ……」
「よろしいんじゃないですかぁ? 聖獣って言われているだけでどれもただの動物みたいですしぃ、言わなければバレませんよぅ」
そういう問題なのだろうか。卵と言えど聖獣を食らった令嬢などと、後ろ指は刺されたくはない。
「ちなみにテレーズ様の犬はぁ、今カイ坊ちゃまがお世話されてますぅ。隣国に輿入れする際にぃ、連れてはいけなかったらしくってぇ」
その頬がへにょっと綻んだ。ベッティはカイの妹だ。腹違いの兄のことが本当に好きなのだろう。
「ベッティはどうしてカイ様のことを坊ちゃまって呼ぶの?」
きょうだいというより、ふたりは主従の間柄に見える。ベッティは本来なら侯爵令嬢だ。もっとふつうに兄妹しててもいいのにと思ってしまう。
「前にも言いましたがぁ、わたしはしょせん平民出なんですよぅ。貴族として生きるよりもこうして坊ちゃまのお役に立つ方がぁ、ベッティはずうっとしあわせなんですぅ。さぁさ、できましたぁ。見つからないうちに召し上がってくださいませねぇ」
ベッティは満たされた顔で笑った。その笑顔が眩しくて、リーゼロッテはそっと目を細めた。
「なぁにおっしゃってるんですかぁ。卵を産むのは雌鶏だけですよぅ」
「やっぱりそうよね。マンボウは立派な鶏冠がついているから、ずっと雄鶏だと思ってたのだけど……」
「雌鶏に大きな鶏冠はないのではぁ? 本当にソレ、ニワトリですかぁ?」
「だってクリスティーナ様も鶏とおっしゃってたもの……」
体はひとまわり大きいが、マンボウはどこからどう見ても鶏にしか見えない。
「クリスティーナ様がぁ? またどうしてそんなことをぉ?」
不思議そうなベッティに、マンボウは東宮にいたことを説明した。祖父であるフリードリヒに贈られて、王女が可愛がっていたことも。
「そういえば聞いたことがありますねぇ。直系の王族はみな、伝説の聖獣を受け継ぐんだそうですよぅ」
「伝説の聖獣?」
「クリスティーナ様は不死鳥を、第二王女のテレーズ様は聖なる犬を、ハインリヒ王は神の猫を賜ったって話ですぅ」
「ふ、不死鳥!? わたくし、マンボウの卵、食べてしまったわ……」
「よろしいんじゃないですかぁ? 聖獣って言われているだけでどれもただの動物みたいですしぃ、言わなければバレませんよぅ」
そういう問題なのだろうか。卵と言えど聖獣を食らった令嬢などと、後ろ指は刺されたくはない。
「ちなみにテレーズ様の犬はぁ、今カイ坊ちゃまがお世話されてますぅ。隣国に輿入れする際にぃ、連れてはいけなかったらしくってぇ」
その頬がへにょっと綻んだ。ベッティはカイの妹だ。腹違いの兄のことが本当に好きなのだろう。
「ベッティはどうしてカイ様のことを坊ちゃまって呼ぶの?」
きょうだいというより、ふたりは主従の間柄に見える。ベッティは本来なら侯爵令嬢だ。もっとふつうに兄妹しててもいいのにと思ってしまう。
「前にも言いましたがぁ、わたしはしょせん平民出なんですよぅ。貴族として生きるよりもこうして坊ちゃまのお役に立つ方がぁ、ベッティはずうっとしあわせなんですぅ。さぁさ、できましたぁ。見つからないうちに召し上がってくださいませねぇ」
ベッティは満たされた顔で笑った。その笑顔が眩しくて、リーゼロッテはそっと目を細めた。