宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 夢だと思いたくなくて、その頬に手を伸ばした。
 きつく抱きしめられたまま、唇を塞がれる。確かめるように舌を絡め、お互いの熱を分け合った。
 泣きじゃくりながら息もつけない。それでもリーゼロッテは、ジークヴァルトと何度も何度も口づけを交わした。

「ぁ……んヴァルト様……ベッティがわたくしを、んん、逃がして……くれて……」

 口づけの合間に必死に訴える。助けに行かないと間に合わない。胸を叩くも、力なく縋りついているだけに終わってしまった。

「王城側からカイたちが向かったはずだ。今頃到着している。問題はない」

 そう言ってさらに深く口づけられた。絡めた舌先から、青の力が包むように体の中に入り込んでくる。
 あたたかい波動に、もう何も考えられなくなる。その青に溺れて、リーゼロッテは安堵(あんど)の中、意識を手放した。


 この後、ジークヴァルトはリーゼロッテを馬の背に乗せて、単独で裏口から公爵家に帰ることになる。
 そんな事とは露も知らないアデライーデたちが、真実を知らされたのはその日の夕刻だ。徹夜で必死に探し回っていた面々に、鬼の形相をされたのは言うまでもない。





 宿命の王女と身代わりの託宣 終

▶森の魔女と託宣の誓い(龍の託宣5)に続く

        (新規小説で投稿中)




※このあと続けて登場人物紹介と番外編を投稿します



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