宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「隣国の知識とはおもしろいものだな。なんでも子が出来やすい時期があるとかで、子種を渡すたびに百発百中で子が生まれた」

 はじめは第一王女のクリスティーナが。次に第二王女のテレーズが誕生し、次代の王となるハインリヒを授かるまで、それを三度ほど行った。そう言うとディートリヒはイジドーラの耳に口づけを落とした。

「イジィ……お前を手にするために、オレがどんなに時間と労力を費やしたと思っている。今さら逃がすなどできるわけないだろう?」
「ですが、だって……」
「あのガゼボで言ったはずだ。必ずイジィを迎えに行くと」

 いつになく動揺した表情で、イジドーラはディートリヒの腕の中その顔を上げた。薄い水色の瞳があの日の少女のように、驚きと羞恥で揺れている。

「本当にイジィは昔のままだな」

 ふっとやわらかい笑顔を向けられて、イジドーラの頬がますます朱に染まる。

「イジィ、諦めてずっとオレのそばにいてくれ」
「……この身が朽ち果てるまで、わたくしはディートリヒ様のものですわ」
「朽ち果て魂だけになっても、だ」
「仰せのままに……」


 後宮でひっそりと(はぐく)まれるふたりの愛に、今さらだなぁと心底呆れ返るカイだった。




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