宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 しばらく時が過ぎ、ミヒャエルはようやく誰もいない静かな場所を新たに見つけだした。今度は王城からはほど遠い、神殿のかなり奥まった朽ち果てた庭だ。獣道(けものみち)を少し進まねばならないが、ここなら気がねなく笛を吹くことができるだろう。

(それにこの場は精霊たちが多そうだ)

 横笛を構え息を吹きこむと、ゆっくりと旋律が奏でられていく。

(知らぬ曲だな)

 自身が吹いているというのに、指が勝手にリズムよく笛の穴を(ふさ)いでいく。いたずらな精霊が力を貸しているのだ。操られるままミヒャエルは美しい音色を響かせていった。

 気づくと多くの精霊に囲まれていた。しかし曲が終わるとすぐに姿を消してしまう。気配をたどると、精霊は獣道の方に集まっているようだ。その正反対、茂みの向こうにある生垣(いけがき)を、なぜか警戒するように見やっているのが分かった。

(あちらに(けもの)でもいるのか……?)

 ミヒャエルは足音を忍ばせて、生垣の向こうを覗き込んだ。うっそうと生い茂るこちらと違って、その先は整えられた美しい庭が広がっていた。

 王城に隣接した場所に王妃の離宮がある。もしかしたらここはその敷地に近いのかもしれない。
 ようやく見つけた場所だというのに、また落胆させられるとは。己の運のなさを嘆きながら、ミヒャエルは早急にこの場を離れようとした。

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