可愛い後輩くんは、スポーツ系御曹司でした ~秘密のギャップで溺愛されています~
「?」

 真顔になった蓮見(はすみ)くんがじっとこちらを見つめていた。

「えっ、何?」
「僕とご飯、(いや)ですか?」

 どこか悲しげに言われ、私は焦った。

「そうじゃなくて! 同僚とはいえ、男性と二人きりで出かけないようにしているの。すぐ噂になるから、ウチの会社」

 自分が噂の槍玉(やりだま)()げられるのは勘弁だ。
 仕事に差し(さわ)る。

「……わかりました」

 蓮見くんがしょんぼりと肩を落としたので私は慌ててしまった。

「決して、蓮見くんが(きら)いだとかそういうわけじゃないからね? 勘違いしないでね?」
「はい……」

 蓮見くんが立ち上がった。

「それに、今、先輩は忙しいですもんね」
「え?」

 蓮見くんがちらっと舌を出す。
 まるでいたずらっ子のような顔だ。

「水泳のレッスンで」
「えっ……あっ……」

 不意打(ふいう)ちをくらって私は動揺した。
 誤魔化(ごまか)す余裕もない。

(何よ、やっぱり気づいてたんじゃない!!)

 昨日の蓮見くんの()まし顔を思い出して、私は顔から火が出そうになった。

「さ、戻りましょう」

 動揺して何も言えない私に、蓮見くんが何事もなかったように微笑(ほほえ)む。

「今日も残業かもですけど……」

 蓮見くんが首を(かし)げ、顔を覗き込んできた。

「レッスンサボらないでくださいね、先輩」
「……っ」

 完全に彼のペースだ。
 私は顔を赤らめて歩くしかなかった。
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