可愛い後輩くんは、スポーツ系御曹司でした ~秘密のギャップで溺愛されています~
 仕事を終えた私は麻布台(あざぶだい)に移動した。
 ホテルに着くとコンシェルジュに案内状を提示し、最上階の更衣室(こういしつ)に案内される。

 ゆったりした更衣室で水着に着替える。
 今日はレッスンではないので、ゴーグルもつけていないし髪をおろしたままだ。

(ビキニ……気恥ずかしいけど、パーティーなんだし)

 薄手の上着を羽織(はお)り、私はプールサイドに出た。

「わあ……」

 ライトアップされた夜のプールに思わず感嘆の声が出る。
 全面ガラス張りで、東京の夜景が綺麗に見える。

(素敵……!)

 私はゆっくり足を進めた。
 パワーランチ仲間が手を振ってくる。

「来た来た、田中(たなか)さん!」
「飲み物、もらってきたら?」

 よく見ると、皆カクテルらしきグラスを手にしている。

「そ、そうね」

 プールサイドにあるドリンクバーに行くと、バーテンの男性がにこりと笑って迎えてくれた。

「何のカクテルにします?」
「ノンアルでお願いしたいんだけど……」

 お酒が入ったままプールにいるのは怖い。

「では、モクテルにしますね」

 バーテンがノンアルコールのカクテルを作ってくれる。
 モクテルは綺麗なオレンジ色をしており、気分が華やいだ。

(あ、美味しい……。フルーティーで飲みやすい)

 さすが一流ホテルのパーティーだ。ドリンク一つも手を抜かない。

(ノンアルコール……そうだわ、ノンカフェインのコーヒーもメニューに入れなきゃ)

 こんな時にもついつい仕事のことを考えてしまう。
 苦笑(にがわら)いが浮かんだ。

(せっかくなんだから、楽しまなくちゃ!)

 私はモクテルを飲みながら、足を進めた。

「田中さん! こっち!」

 パワーランチ仲間たちが、プールに浮かんだ巨大なボートフロートに乗って手を振っている。
 ボートフロートは口の()いた貝の形をしており、水着姿の彼女たちはさながらビーナスのようだった。

「今、行くわ」

 私は意を決し、プールにそっと足をつけた。
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