Same cross
久しぶりに大声をあげて体温が上がったせいか、俺は力が抜けて砂浜に座り込んだ。
 砂でせっかくの可愛い服を汚したくなかった俺は、深くは座らずに杉本の質問に答えた。
「わかんないよ、それは。でも俺は自分の気持ちに嘘ついてまで他の人の意見に合わせたくないんだ。」
「最初は周りの意見とか気にしてたんだよ、でも次第に俺の心が壊れていくようなそんなのを感じたんだ、俺はその感覚に心底ゾッとしたよ。」
 杉本は静かに俺の話を聞いている。
「俺、お前がそんなに悩んでるやつだと思ってなかったよ、杉本。お前が今経験してる状況はすごく辛いと思う。だけど俺の好きなものを否定された時は少し傷ついた。」
 地平線に輝いている月を見ながら俺は言った。
 いつしか少し離れて俺の横に座っていた杉本は、申し訳なさそうな表情をしていた。
「俺めちゃくちゃ身勝手だった。さっきの言葉は本当にごめん。」
 杉本は俺に謝った。
 少しの間俺らには気まずい空気が流れたが、俺は昔のような杉本に対する苦手意識が薄くなっていっているのを感じていた。
「なんか、俺ら全然共通点ないと思ってたけど、意外と同じようなことで悩んでるな。」
 俺は星空を見上げながら杉本に言った。
「俺が何か言ったところで、お前の親の意見が変わるわけじゃないけど、一旦自分優先で生きてみても良いんじゃないか?お前の人生なんだし。」
「無責任に聞こえるかもだけどさ、自分の心を殺してまで好きなことを我慢すんなよ。」
 漣がさっきまで言い争って騒がしかった俺らを仲裁するように音を立てている。
 杉本は少し黙ったあと、夜空を見上げて俺に言った。
「なんかお前、かっこいいな。」
 俺は驚いて杉本の顔をまじまじと見たが、すぐ笑いながら答えた。
「まあな」
 満天の星空だった。                                 

 完
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