継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
「こ、こんなの……まやかしよ! こんな嘘……誰、誰かが魔法で作り出しているに違いないわ!」
「これは全て、私の記憶です」
「嘘よ……こんな、こんなの……だって私は、夫に……子ども達を託されたのよ。その証文だってあるわ!」

 髪が乱れるのも気にせず、頭を振って主張するケリーアデルの必死さに、私の心は冷めていく。

 自分の非を認めず、必死に己の立場を守ろうとしている。今でもレドモンド家の財産を自分のものにしようとしている。なんて醜いのだろう。
 貴族としてあるまじき姿だわ。

 この人に、一時でも認めてもらいたい、愛がほしいと思っていたなんて……私は、なんて滑稽(こっけい)なのかしら。

 唇を噛み締めると、横にいたヴィンセント様が控えていた使用人へと視線を送った。
 使用人は蓋の開けられた箱を差し出した。そこには、赤い布に包まれたものが置かれている。

「証文とは、これのことか?」

 ゆっくりと布が払われると、封蝋のされた手紙が日差しを浴びてきらりと光った。
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