継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
 私の頬を、冷たい雫が落ちた。
 言葉をつまらせた私の代わりに、ヴィンセント様がひときわ低い声でケリーアデルに告げる。

「よく書かせたものだな。しかし、それがお前のしでかした過ちだ。本人の意思で書かれていない文書は認められない」
「夫の意思よ!……私は夫の遺志を守ってきたのよ!」

 あくまで、中身を正規のものだと言い張るケリーアデルに、私は深く息をついた。本当に、この人は救いようがないわ。

「中身はお父様の字とは思えない酷いものです。でも、当時のお父様はペンを握るのもやっとだったでしょう」
「そ、そうよ! どうせ、綺麗に書かれていたら、それだって書かせたというのでしょ。お前は、私のいうことが聞きたくないから、デタラメばかり並べているのね。本当に、無能だわ!」
「中身が本物かは、この際、どうでもいいことです」
「……何をいってるの?」
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